平成30年北海道胆振東部地震でなぜ北海道は大停電に陥ったのか。分かりやすく解説

2020年5月30日社会社会

ツイッターとかを見ていると混乱している人が多すぎるので、ちょっとだけ詳しい私が解説したい。

平成30年北海道胆振東部地震でなぜ北海道の大停電は起こったのか。分かりやすく解説

2018年9月6日3時8分の地震とその影響

2018年9月6日の3時8分、スマートフォンのアラートと地震で目を覚ました方も多いだろう。

震源は胆振東部の深さ37Kmの場所で発生した。震度6強の揺れが街を襲う。後日厚真町が震度7だと発表された。震度7は北海道の地震では初である。

北海道 地震

逆断層型と呼ばれるタイプの地震であった。

被害は大きく、全道の発電所が停止したことにより北海道はブラックアウト、水道管の破裂、道路の陥没などにより、ライフラインおよび物資の輸送経路が大きく損なわれた。

https://twitter.com/reot1211/status/1037792709224742913

ここまで被害が拡大したのには前日まで猛威を振るっていた台風21号の影響だ。地盤が緩んでいるところを地震が襲い、大きな打撃を与えた。

停電中のスーパーやコンビニでは手計算により会計を行う事で対応していたが、客がごった返し、品薄状態が続いた。

気象庁はこの地震の名称を「平成30年北海道胆振東部地震」と定めた。

北海道はなぜ大規模停電に陥ったのか

ツイッターでは停電についてこんな話が飛んでいる。

いずれにせよ原因をよくわかっていない方が多い。

直接的な原因は北海道最大級の苫東厚真火力発電所の緊急停止である。

震災当時、この発電所は北海道の電力の約半分を発電していたが、ここが停止してしまったために系統周波数が下がり、ドミノ倒しのように他の発電所も停止したのだ。

この「周波数が下がると停電」というのが今いち理解してもらえないようなので、説明していきたい。

発電とは、「重量物を皆で持つ事」に似ている。分かりやすく図を書いてみた。

※この図は実際の発電量や需要を模したものではない、あくまでわかりやすくするためのポンチ絵であることを理解願う。

北海道 停電

発電とは重り(電力需要)を複数の発電所で支える事である。

もちろん私たちが電力を多く使えば使うほど、この重りは更に重量を増し、それに応じて各発電所はもっと本気を出して重りを支えなければならない。

この図では、苫東厚真火力発電所が100%の本気を出して発電しているので、もし重りが増えた場合は、その他風量、その他水力、その他火力の本気度を上げて対応することになる。

もし重りを支えることができなかった場合、高さ(周波数)がどんどん下がっていき、潰れてしまう。

つまり「周波数が下がる」という事は「電力需要」に対して「発電所の出力」が足りていない事を意味する。

周波数が変動してしまうと、繋がっている器械が壊れたりする。

結果、今回の地震では、どのように停電したのかというと

  1. 苫東厚真発電所が地震で停止
  2. 苫東厚真の分を他の発電所で補おうとしたが、足りなかった。
  3. 周波数が下がって停電

という順序で大停電が起きたのだ。

泊発電所についてTwitterでは

まず状況の確認から。

北海道で唯一の原子力発電所である泊原子力発電所は福島原子力発電所の事故以降、長期停止中であった。

この「原子力発電所は長期停止中」とういう単語に対して、正しく意味が伝わっていない人が多いのだが、止まっているのは「原子炉」のみである。

つまり原子炉が止まっていて発電はしていないが、必要なポンプやファン、その他機器は動いているし、それらの定期試験運転なども必要な頻度で実施している。

皆さん知っているところで言うと、「使用済燃料ピット」という物があるが、これは基本的に常時冷やしておかなければならない。これもポンプを使って水を循環させているのだ。

このポンプやファンはもちろん電気を使うが、現在泊原子力発電所では電気を作っていない。

そこで我々一般家庭と同じように他の発電所でつくった電気を送電線から貰い、泊原子力発電所内で使用している。

その時、今回の地震が起きた。

前項で話した通り、全道の発電所が停止、これに伴い泊原子力発電所は他から電気を貰う事ができなくなった。

これが報道された通り「外部電源喪失」である。

これに対し、泊発電所では非常用発電機が自動起動して電源供給を行い、ポンプ類を動かし続けた。

現在は他の発電所が再起動したので外部電源が復旧、非常用発電機は停止し、いつも通りの電源状態となった。

この事に関してツイッターでは沢山の意見が飛び交っているので、それらに対して正しい情報を提供し、皆さんに安心していただきたい。

もちりゃんさんは、「原子力発電所が動いていれば停電は起こらなかった」と主張している。ツイッターではこの主張をする方がかなりの数いるが、、これは少々疑問である。

原子力発電所は基本的に本気度100%から変動しない。

結果、今と同じように苫東厚真火力が死んだ分の電力は、原発ではなく他の火力や他の水力で補わなければいけない事に変わりは無く、それができないのであれば今回のように停電してしまう。

停電するかしないかは、泊原子力発電所が稼働している時に苫東厚真がどれだけの出力で運転していて、他の発電所にどれだけの余力がるのかが問題となるのだが、それは誰もわからない。

こんな風に湾曲して解釈される方もいるが、現状本当に電力の安定供給需要は厳しいのだ。笑

勿論北電からすれば「原発動いてほしい」という世論はありがたいかもしれない、しかし誰かが再稼働しろっと言ったからと言って原子力発電所は動かない、審査に合格しなければならないのだから。

あと考えればわかると思うが待機電力は30%も無いので、いちいち家中のコンセントをひっこぬ抜く必要は無いと思う、まぁ止めはしないけど。

森田さんは反原発派なんだろうというのがこの文章から痛いほど伝わってくる。

原発が動いていればよかったかどうかは個人の思想によるところであるので触れはしないが、「泊原発が震度2で外部電源喪失」というのはちょっと勘違いしているようなので訂正しておく。

あくまで泊発電所の外部電源喪失は、苫東厚真が停止し、大規模停電した事によるものであり、「泊原発が震度2で揺れたから」ではないという事を認識してほしい。そんなに弱くない。

aoisaraさん、OMPさん、俵さんは主に「非常用発電機が停止していたら福島と同じになる所だった」と心配しているが、現在長期停止中の泊発電所では非常用発電機が停止したところで福島のようにはならないと考える。

福島では起動中の原子炉で電源が喪失したため、冷やせなくなった炉心が溶けてしまい、発生した水素の爆発で屋根が吹き飛んだ。

対して停止中の泊原子力発電所では、そもそも原子炉に燃料が入っていないので炉心溶融は発生しないし、それに伴う水素爆発も発生しないのである。

また、「非常用電源が故障していたら」「非常用電源の燃料である軽油が無くなったら」という心配をするのは当然である。下記のように説明する。

非常用電源は毎月起動して各パラメータの健全性を確認しているので全部故障して動かないというのは考えにくい。

また、非常用電源の燃料である軽油は約1週間分を確保しているので、その間ずっとこの状況が続くとは考えづらい。というか無くなったらヘリでも船でも補給をすればいい話である。

仮に、それでも物理的に壊れたりして非常用発電機での給電を継続できなくなった場合はどうするのか。

もちろんその場合の対策も考えてある。

まず、非常用発電機が壊れた場合は一つ目のバックアップとして、6台の「代替非常用発電機」がその代わりの役目を果たす。

これは名前の通り「非常用発電機」「代替」であり、屋外の高台に設置したようなものである。高台に設置することで想定外の津波にも対応する。(ちなみに非常用発電機も水密扉などで津波対策を行っている)

代替非常用発電機

代替非常用発電機もダメだった場合は、8台の「可搬型代替電源車」を使用する。

これは唯一移動式の電源となっており、これを運転して電源を供給する接続盤の場所までたどり着き、ケーブルを繋いで給電する。

このように泊発電所では何重もの電源対策を行っており、このすべてが喪失するということは考えにくいのである。

ちょっと話が逸れるが、最後の可搬型代替電源車を使うのは北電のSAT(Severe Accident Team)という事故時専用チームである。

本来は、中央制御室で勤務している「運転員」が事故の対応を行うのが一番いい。

しかし通常業務をこなしながらすべての機器の操作訓練をこなし、すべての手順を覚えるのは現実的ではない。

そこでこのようなチームがつくられたようである。

西尾さんは「原発を廃炉して太陽光で賄おう」という意見。

「原発も火力も全部潰して全部太陽光と風力にすればいいじゃん!すごいエコ!」っていう方、たまに居る。

それが可能なら私もそうしたい。で最初の「発電とはみんなで重りを持つのに似ている」というのを思い出してほしい。

太陽光は夜使えない、風力は風が無いと使えないのである。つまり先ほどの図でいう「本気度」が激しく上下するのだ。

減った分の電力は?そう、人間が出力を上下できる火力や水力が吸収するしかない。

結局自然エネルギーは自然の機嫌によって出力が大幅に上下するのですべてを自然エネルギーに変えることはできないのだ。

あと「家庭用に100Vはもったいない」とか「工場では200Vで足りる」とかっていうのは違う。説明はしないけど。

まとめ

SNSが発達していろんな人がいろんな意見を発信できるようになった。

ただ今回のようにそれらがすべて正しいわけでは無い。

根拠のない情報や個人の意見などが混じっている。このブログだってそうだろう。

私たちはそんな中から正しい情報を自分で選択しなければならない。非常に難しい状況だなと感じる。

この記事を見た人が未来のエネルギー産業について少しでも自分で調べて自分の意見を持っていただけたら幸いだ。


 

 

Posted by mottiy